ハエのキャラクターが生まれるまで

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輪廻転生

仏教学において、死んであの世に還った魂はまたこの世に生まれ変わりそれが永久的にループするという教えがある。
しかし次に生まれ変わる魂の入れ物は前世と同じとは限らない。基本的には生前の業の深さに反映して決定される。つまり死んだ時点で大方、次何に生まれ変わるかは決まっている。
ある例外を除いては…。

チャレンジ

「はい、一列に並んでくださーい！霊界手続き終わった方からカルマリスト持って天神窓口へお進みくださーい！」
霊界の案内人の指示に従って俺は最後尾に並んだ。

俺は４９日前死んだ。そして死後から今日まで下界で彷徨っていたけど特に未練もないと判断されたのかこっちへ強制送還された。
生前は男の人間だったのは覚えているけど名前とかそういう細かい事は覚えていない。どうでもいい記憶からどんどん削除されてくシステムなんだろう。
あーあ、このシステム下界の連中に教えてやりてーなー。みんな死んだらどうなるんだろって考えてるもんなぁ。

「はい、次の方どうぞー」
俺の番がきた。この霊界手続きはカルマリストという生前の業が記された用紙をもらう。
生前の業、つまり生きてる時自分が犯した罪のことね。ポイント制になってて殺人とか殺生系の業が一番ポイントが高い。このポイントが低いほど、次に生まれ変わる生き物とその環境が優遇される。人間は相当ポイントが低くないとなれないらしい。
この用紙をもらったら次に天神窓口へ行ってポイント計算をしてもらう。計算が終わった者から天神様のとこへ行って次の生物の宣告を受ける、というのがこの霊界でする事のザックリとした流れらしい。なんか市役所とかでやる手続きみたい。

とりあえず計算まで終わり天神様との面談が始まった。

「１６３７ポイントか〜けっこうあるな〜。人間は無理かなぁ」

「そうですか」
やっぱ盗みとかけっこうやったからな…。ここで全部清算されるわけね…。

「今の生息数考慮すると…クロサイだね。楽しいと思うよサバンナ！まぁ密猟者にツノ狙われっけどよ」

パソコンみたいなのをカタカタいじりながら天神様は人ごとのように言う。

「もっとないんですか！？人に飼われてる安全な場所の犬とか！！」

「贅沢言うなよ。そういうのは１０００ポイント以下からしか…」

カランカランカラーン！！リセットチャーンス！！

天神様の話の途中、ベルみたいなけたたましい音とアナウンスが鳴り響いた。

「お！お前運いいな！今日のリセットチャンス当選だよ！」

天神様曰く、１日に１回今のベルみたいなアナウンスが流れ、その時にちょうど天神様と面談してる者はリセットチャンスという生まれ変わりを変更できるルーレットの参加資格が与えられる。現状決まっている生き物よりランクが下がる恐れもあるので、基本このルーレットを受けるのは決定された生き物に不満がある者だけだそうだ。
俺はサイが嫌だったのでもちろん参加することにした。開催は週に１回。霊界が休みの日曜日に、その週の当選者で行われるようだ。

そして日曜日

「さぁ今週もやってきましたリセットチャレーンジ！！皆さん素敵な生まれ変わりをゲットしてくださいね〜！！」

なんかバニーガールみたいな格好した司会の女性が会場を盛り上げる。観客もオールスタンディングだ。
その日のルーレット参加者は俺含め３人。俺はトップバッターだ。
ルーレットはダーツ方式になっており、昔テレビでよくやってたパジェロとかタワシとかのあれだ。回ったルーレットに矢を投げて、刺さった生き物が次の生まれ変わりとなる。ここで決定した生き物の拒否は認められない。

ルーレットの的に書かれてるのは…ブラッドピットの養子！？こんなんあるのか！でもいいのばっかじゃないな。大腸菌O-157とかもあるし…。

「では最初のあなたから！どうぞ〜！！」

バニーガールの声と観客のブラピコールの中、回されたルーレットに俺が投じた矢は…

サクッ…！

刺さった矢に近づいたバニーガールが声高に叫んだ。

「決まった〜！！！ショウジョウバエだ〜！！！」